先日、北島シネマサンシャインで木村大作監督の「劔岳 点の記」を試写会にて鑑賞しました。この映画について事前に知っていたわけではなく、当日になって同僚のY君が娘さんがインフルエンザにかかって観に行けなくなったと、チケットを譲ってくれたので突発的に観に行ったのですが、すばらしい映画でした。
映画が6月20日の公開なのでストーリーについてはあまり書けませんが、ちらっと触れておきます。
日本地図がまだ完成していない明治時代、日本陸軍の指示により、これまで未踏であった立山連峰の劔岳に地形計測のための測量点を据え付けに行くために派遣された柴崎芳太郎(浅野忠信)とその案内人である宇治長次郎(香川照之)の、雪山との戦いのストーリーです。ストレスの溜まる雪山で仲違いがあります。同じ時期に初登頂に挑むライバルもいます。軍からのプレッシャー、自然との闘い、リーダーとしての葛藤など、色んな試練を乗り越えながら実直に仕事をこなす男のストーリーです。
さて映画の感想ですが、まず、映像がとてもきれいです。
序盤、柴崎芳太郎が、長次郎さんの元に劔岳登頂の案内を頼みに行った際、駅まで迎えに来た長次郎さんと田園でおむすびを頬張るシーンがありますが、手前の田園、遠くに連なる立山連峰、空を舞うトビの映像はさすが映像カメラマン出身の監督さんだなぁと思いました。翌年の登頂のため下見に来た立山の秋の自然美も印象的でした。
山に入り、きれいなものであった自然が彼らに対する脅威に変わります。尾根を伝い、谷に降りて劔岳に登るためのルート探しです。行けそうだと思って山を越えて見ても、そこからも上がれないというようなことばかりです。今ならばルートが確立されていますが、当時は登るためのルートから自分の足で探して開拓しなければなりません。へこたれそうになったとき、「誰かがやらねばならない。」そういう台詞も出てきます。
翌年の劔岳初登頂チャレンジも困難を極めます。吹雪や雪崩、滑落など、ほとんどのシーンは現場で撮影したそうです。CGを使わないということが、この映画に対する監督の方針だったそうです。それ故に、派手さがないぶん、リアルに迫力があります。途中、滑落した観測隊のメンバーを助けるために、地元のまたぎが急斜面を滑り降りるシーンがあるのですが、冬期オリンピックで見るスキー大回転並のスピード感でした。
さて、この映画では柴崎のライバルとして山岳会が初登頂を競って山に入ってくるのですが、彼らはヨーロッパから仕入れた最新の登山道具を使っています。山登りの道具だけでなく湯沸かしのためのストーブ(バーナー)なども持っていたりして、薪で火を熾す柴崎隊とは対照的です。それを柴崎らは「遊び半分で山に来ている」と見るわけですが、この辺、木村大作監督の主義主張=CGという最新技術を使わず淡々とリアルをフィルムに収めていくスタイルが重ね合わされていたのではないでしょうか。
それともうひとつ印象に残ったのが、手旗信号です。
今は無線がありますが、当時は離れたところと意思疎通を図るのに鏡や手旗信号を使っていました。野営地で柴崎は山岳会のメンバーから「手旗信号を使うと嫌なやつとも口をきかなくて良いからな。」と嫌みを言われるのですが、最後、それが仲間の証に使われます。口をきかないための手段と揶揄された道具が、このシーンではどうしても伝えたい思いを伝えるための唯一無二の道具に成り代わるわけです。僕はそういう風に解釈しました。
最後となりましたが、忘れてはならないのは宮崎あおいちゃんですね(笑)
夫である柴崎の帰りを待ちわびる妻の役ですが、随所にキュートさが全開です。仕事でしばらく家を空ける柴崎に「22日ということは22日したら帰ってくると言うこと?」と聞き、「23日目に帰ってくるよ。」と優しく教えられて「・・・うん」と頷くシーンは男心をくすぐりました。危険な仕事に赴く夫の帰る日が一日違うというのは彼女にとっては一大事でもあり、一日千秋の思いなのでしょう。こっそり荷物にお守りを忍ばせたり、芝崎に寄り添ったり、そういう役柄を上手く演じていたと思います。
試写会の後は木村大作監督が舞台挨拶として聴衆に映画の解説やこれにかけた思いを伝えてくれる時間を取ってくれました。御年70才なのですが声は張っていて気力みなぎっておりました。この映画のプロモーションで全国を回っていらっしゃるそうで、そのパワフルさに圧倒されました。その様子も公式サイトにあるブログにアップされています。公開されたらもう一度、必ず観に行きたいと思います。みなさんも是非どうぞ~ (^^)
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